8月5日(火)に開幕した夏の甲子園(第107回全国高校野球選手権大会)も佳境に入り、残るは8月23日(土)の決勝戦のみとなりました。14年ぶりに決勝進出を果たした西東京代表の日大三高が夏3度目の栄冠に輝くか、それとも春の選抜は2度の優勝があるものの、夏はこれまでベスト8が最高だった沖縄代表の沖縄尚学が初めて優勝を飾るか。どちらも強豪校だけに“深紅の大優勝旗”の行方が大いに気になるところです。
さて、高校球児のプレーと同様に甲子園を沸かせているのが、スタンドからの応援です。高校野球応援の定番曲からフレッシュなナンバー、一風変わった選曲や独自に作曲したオリジナル曲まで、多彩な楽曲で球場はもちろん、画面越しでも興奮を与えてくれています。そこで、今大会の出場校が披露・演奏したさまざまな応援曲のなかから、印象深かった高校の応援曲を5曲、独断と偏見で紹介していきましょう。
まずは、3日目(8月7日)に登場した叡明(埼玉)の応援団が演奏した、
CUTIE STREET 「かわいいだけじゃだめですか?」です。同曲は2024年9月にデジタル・リリースされると約1ヵ月でTikTokの楽曲投稿数が10万を超え、TikTok最優秀バイラル楽曲賞にもノミネート。Spotify「バイラルトップ50」日本1位にランクインするなど、大きな“バズ”を起こしました。甲子園では「かわいいだけじゃだめですか?」から
布袋寅泰 「バンビーナ」へとつながるアレンジも好評だったようです。
対戦相手の津田学園(三重)は、スクールカラーのグリーンのメガホンが揺れるなかで、オリジナル曲「snarl」(スナール)の“魔曲”ぶりが強く印象に残りました。
続いて、4日目(8月8日)に惜しくも延長タイブレークで敗れてしまった、高知中央(高知)の「手のひらを太陽に」です。同曲は、国民的キャラクター“アンパンマン”の原作者で、幼少より高知県で育った漫画家の
やなせたかし が作詞した童謡です。この3月よりやなせたかしとその妻・小松暢をモデルとしたNHK連続テレビ小説『
あんぱん 』が放送されていることも重なって、地元愛深まるタイムリーな選曲となりました。
対戦した綾羽(滋賀)の応援席からは、
T.M.Revolution (
西川貴教 )のヒット曲「HOT LIMIT」がチャンスの際によく聴こえてきました。これまでも西川貴教楽曲を演奏してきた近江高校が綾羽に応援参加していたこともあり、もはや滋賀代表高校にとっては、地元のスターの応援定番“ご当地ソング”といったところでしょうか。
5日目(8月9日)の第1試合には、弘前学院聖愛(青森)が登場。チャンスに流れるオリジナル曲「聖愛マーチ」も良いですが、
りんご娘 の「だびょん」の替え歌もインパクトを残しました。りんご娘は地元・弘前を拠点とするアイドル・グループで、“ご当地アイドル四天王”“ご当地アイドル殿堂入り”の称号を持ち、2023年のアイドルフェス〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉の出場権をかけた全国選抜グランプリにおいて優勝を果たすなど、ご当地 / ローカル・アイドル界隈では著名なグループです。バラエティタレントやアーティストとして活躍している
王林 も所属していました。
対戦したのは、福岡代表の西日本短大付。プロミュージシャンで、千葉ロッテマリーンズや東北楽天ゴールデンイーグルスなどの応援曲も手掛けたジントシオ作曲によるオリジナル曲「西短ファイター」や、“西短”つながりでおなじみの「にしたんクリニック」CMソングなどで盛り上げていました。
7日目(8月12日)の第2試合では、松商学園(長野)のスタンドから、
ハムちゃんず が歌うアニメ『とっとこハム太郎』のオープニング・テーマ「ハム太郎とっとこうた」のメロディが。現役の高校生が生まれる前の楽曲だけに、選曲理由が知りたいところですが、リアルで見ていた世代には“とっとこ はしるよ ハム太郎”のフレーズが思い浮かんだのではないでしょうか。
これに負けじとというわけではないでしょうが、対戦相手の岡山代表の岡山学芸館は、人気ゲーム『アイドルマスター』の楽曲「キラメキラリ」を演奏。また、今季サッカーJ1リーグに昇格したファジアーノ岡山のサポーターが童謡「桃太郎」のメロディに乗せた「桃太郎チャント」も披露。Jリーグサポーターにはおなじみの“岡山です 岡山です 岡山 岡山 岡山です もっかい言うけど岡山です”のチャントが甲子園に響きました。
最後は、1956年以来69年ぶりの決勝進出を目指すも、準決勝で惜しくも延長戦の末涙をのんだ県岐阜商(岐阜)です。公立校ながら、日大山形(山形)、東海大熊本星翔(熊本)、明豊(大分)、横浜(神奈川)と次々に実力校を破っていくのと比例するように注目が高まったのが、県岐阜商スタンドから流れてきた「GOLDFINGER '99」です。のけぞるように上を向き、青いメガホンを揺らしながら“アーチーチーアーチー”と大声援を送る姿に、高校野球ファンは魅了されたに違いありません。
「GOLDFINGER '99」は、1999年に
郷ひろみ の76thシングルとしてリリース。ラテン・ミュージック・シーンのスーパースター、
リッキー・マーティン の「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」(Livin' la Vida Loca)のカヴァーで、オリジナル同様に「GOLDFINGER '99」も大ヒットし、「よろしく哀愁」「哀愁のカサブランカ」に並ぶセールスを記録。1999年に77thシングルとして発表した「GOLDFINGER '99 Remix」のセールスを合わせると、郷の最大のヒット曲となります。
名曲や魔曲と呼ばれる中毒的な楽曲は、各校に広く採用される傾向にありますから、「GOLDFINGER '99」はじめこれらの楽曲を応援曲に使用する学校が今後増えていくかもしれません。
(写真は「ハム太郎とっとこうた」も収録された2011年8月リリースの『
コロちゃんパック「とっとこハム太郎でちゅ」うたうでちゅ 』)
VIDEO
VIDEO
VIDEO
VIDEO
VIDEO