意外と少ないリー・モーガンのワン・ホーン作。メッセンジャーズ時代やジャズ・ロックでの派手やかなプレイとは異なり、肩の力を抜いた軽やかなソロを披露。1曲を除いてすべてスタンダードというのも特徴的だ。

多くの共演作を残したスウィング派の名人同士、ルビーとハイマンのニュースクール大学(NY)におけるデュオ・ライヴ。無類のスウィング・センスあふれる楽しいプレイでスタンダード・ソングの名曲を料理する。乗り出したら止まらなくなるような熱演を随所でみせる。

ピアノ同士のデュオ作品という珍しいフォーマットの一作。レナート・セラーニとダニーロ・レアという二人の実力者が濃密な会話のようなメロディの交換を行なうロマンティックな2008年のレコーディング。

ロイ・エルドリッジはパリ滞在中の1950〜51年にヴォーグで何度も録音を実施。そこから数セッションがこのアルバム名で再発された。スウィンギーでメロディアス、そして力強いトランペットが鳴り渡る。得意の歌も聴けるが、驚くのは彼による貴重なピアノ独奏の3曲だ。

タイトル曲のような自作曲もやっているが、「乙女の祈り」「ラプソディ・イン・ブルー」「ハンガリー舞曲第５番」など有名曲のカヴァーが中心。しかしふつうにやっているわけではなく、リズムやテンポを変え独自に料理している。その料理人の技が冴えまったく新しい世界を作り出す点がすごい。

ガーシュウィン、バーンスタイン、武満といった名作曲家の楽曲を取り上げた2018年のアルバム。山中のレギュラー・トリオによる息の合ったインタープレイで、クラシック音楽に新たな息吹を吹き込む充実作。

77年に東邦生命ホールを借り切って録音されたセカンド・リーダー作。デビュー作『ドリーム』同様オーソドックスなピアノ・トリオ編成。共演は川端民生(b)と宮沢昭一(ds)。モンク＆エリントンの影響を受けたオリジナルな世界。その後はビッグバンド中心だけにトリオ作品は本当に貴重。

タイトルが示す通り、４者がコレクティブに鬩ぎあって動きとエモーションを加熱加速させ、繰り出されるフレーズの表情を刻々変貌させてゆく。その音姿、たまらなくスリリングである。ソロの後ろで、あるいは脇で、常に音が仕掛けられ、それが動きを触発してさらに別の動きを生み出す。その相即が見事だ。

ファイティング・スピリットあふれるテナー・サックス奏者、植松孝夫がトリオへ吹込んだクインテット作。２曲のカヴァーとオリジナル。フュージョン流行の時代に熱気に満ちたストレートアヘッド・ジャズで気を吐いた。益田幹夫の天才的なエレピ演奏に注目。

森山が結成していたカルテットに、パーカッション奏者を加えて録音した83年の作品。ダイナミックなドラミングの中で持ち前の繊細さが輝きを放つ。美しいメロディが大胆なプレイの中で不思議な生命力を育む。そんな森山ジャズの魅力が満載された一枚。

和ジャズの中でも幻の一枚として知られる作品。ピアノの相澤が中心のカルテットだが、サックスの森村も重要だ。実質的にはふたりのユニットで、彼らを中心にフリー・ジャズにまで足を踏み入れた痛快・大胆な演奏が繰り広げられる。未発表の２曲も素晴らしい。

グラフィック・デザイナーとしての顔を持つ個性派ギタリストの4枚目。柔らかなアコースティック・ギターとピアノに、甘やかなサックスとセピア色のバンドネオンを加えたアンサンブルが、静謐で奥深い心象風景を創出。美しい絵画を見るかのように、心洗われる。

関西を中心に活動するシンガー、谷山和恵。20年来の仲間であるギタリストの大野こうじを迎えたファースト・アルバムは、タイトルどおりシンプルなデュオ作品に。ジャズ・ヴォーカル特有のベタついた印象がまるでなく、伸びのある声がサンバやボサ・ノヴァと非常にマッチしている。

20代半ばの新鋭ピアニストによるデビュー作。佐藤 忍(b)、鎌倉規匠(dr)が脇を固める。オリジナル2曲を除いてチック・コリア、ジョニー・マンデルなど幅広く、しかし王道をとりまぜた選曲。アンサンブルは現代的で端正、スタイリッシュな面持ち。スタンダード曲に取り組む面白さにあふれた作品となっている。

孤高のジャズ・ピアニスト、第２弾。研ぎ澄まされた感性と独創性に富むピアノにサックスとベースを配したドラムレス・トリオで、静謐な佇まいの深遠なる異空間を創出。過剰な装飾を排し、選び抜かれたミニマルな音で紡がれる透徹な響きが、魂を浄化する。

大学卒業後、証券会社勤務を経て結婚・出産・離婚を経験、そこから歌手に転じた異色の経歴の持ち主。現在はラジオのパーソナリティとしても活躍中。これはピアノ・トリオをバックにしたデビュー作。おなじみのスタンダード集だが、「シャロット・フィールズ」は亡き松本英彦が残した曲。

世界的にも珍しいジャズ・ハーピストの77年のデビュー作。天国の音色を、ベースとドラムスのジャズの世界に持ち込み、スウィンギーに歌わせることで、ハープという楽器の新たな可能性を引き出した。白い翼の天使の戯れを思わせる、ピュアでハートフルなジャズ。

フランスのピアノの名手による、澤野工房リリース12枚目となるトリオ作品。スタンダードとオリジナルから構成されるレパートリーに粋なアレンジを施し、美しいメロディを豊かな歌心で際立たせる。洗練された流麗なピアノと以心伝心のアンサンブルが心地よい。

天国編と地上編からなる一大叙事詩のような大作。壮大なクワイアとともにカマシのスピリチュアルなサックスが炸裂する。前作『ハーモニー・オブ・ディファレンス』、前々作『ザ・エピック』の流れを継承した完成形といえる出来映えで、現代ジャズのひとつのランドマークになり得る作品。隠しCD付きの3枚組。

ブラジル出身のピアニスト、ブルーノ・サウエルがシカゴで結成したブラジリアン・フュージョン・バンドによる84年の快作が復活。エリス・レジーナに通じるガルシアのヴォーカルがなんといっても魅力的。最後の２曲はサウエルの遺作となった2017年の録音。

ルクセンブルクのアコースティック・ピアノ・トリオによる第３作目。ジョシュア・レッドマンが「叙情的で、ストーリーを語るのに優れ、音楽的に妥協がないトリオ」と絶賛したように今作でも類い稀なメロディセンスと現代的なリズムで聴かせる。ジョニ・ミッチェル「ボス・サイズ・ナウ」をカヴァー。

1980年、ジャズの時代の転換期を物語るウィントン・マルサリスの登場。アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに加わって間もない天才トランペッターのプレイを捉えた貴重な2枚組完全版ライヴ。

カナダのバンクーバーを拠点に活動する自作自演シンガーの2018年作。弾むリズムとキャッチーなサビのメロディが印象的な冒頭曲「NOUVEAU」はヴォーカルのキュートな表情も魅力。新感覚の音ながらもスウィングを感じる「YOU SPEND」もいい。「My Favorite Things」も一筋縄ではいかない仕上がり。

スウェーデンのシンガーがスタンダードを歌った2018年録音作。ピアノ・トリオをバックに、フェイク抜きでメロディのよさを生かす、王道路線の白人女性ヴォーカルだ。典型は飄々とした表情も覗かせ、安定感十分の「センチメンタル・ジャーニー」。気だるい雰囲気を醸す「トラヴリン・ライト」も魅力的。

都内のライヴやCMなどで活躍するキーボーディスト率いるユニット、６年ぶりの第２弾。キャッチーなメロディ、テクニカルでスリリングなプレイ、ご機嫌なグルーヴ。フュージョン黄金期を知るメンバーが贈る、直球ストレートな極上のシティ・フュージョン。