ヴィジブル・クロークス(Visible Cloaks)の
スペンサー・ドーランによる“不確定性サイバー室内楽”プロジェクト、コンポニウム・アンサンブル(Componium Ensemble)の初リリース作『八つの自動作曲作品集』が、エム・レコードより10月17日(金)に発売予定となっています。
2017年の傑作『
Reassemblage』や
柴野さつきとの合作『
FRKWYS Vol.15: serenitatem』などで知られる、米オレゴン・ポートランドのデュオ“ヴィジブル・クロークス”の片割れとして活動し、自身が編集を担当した日本のアンビエント・コンピレーション『環境音楽 = Kankyō Ongaku』が第62回グラミー賞の最優秀ヒストリカル・アルバム賞にノミネートされるなど、現代のアンビエント、ニュー・エイジ・シーンを牽引するペンサー・ドーラン。3年の月日をかけて制作し、2023年にリリースしたロードトリップ・アドヴェンチャー・ゲーム『SEASON: A letter to the future』の
オリジナル・サウンドトラックもアンビエント / ニューエイジ・ファンを中心に話題を呼びました。
本プロジェクトは、古代ギリシャのアルキメデスに始まり、9世紀バグダッドのバヌー・ムーサー兄弟によって発展した自動演奏楽器の長い歴史から着想。この自動演奏楽器は水圧を利用し機械的に制御されたフルートと、先見性のあるプロトMIDI構造を持つパンチカード機構という、プログラム可能な自動演奏のコンセプトを初めて完成させていますが、この機械的な音楽制作は、千年後、筐体それ自体で自動作曲できる「コンポニウム」という機械音楽システムを発明したディートリッヒ・ニコラス・ウィンケルによって偶然性の原理を用いて拡張されました。
ドーランはコンポニウム・アンサンブルでこの系譜をさらに発展させ、デジタル技術で膨大な数の仮想楽器を自動化し不確定性の要素を導入する機能を活用することで、人間の衝動や恣意の限界を超えた仮想演奏者という「新たな形態の出現」を提示。紀元前に始まる自動演奏楽器と19世紀自動作曲機械の概念をバーチャルスタジオ上で結合発展させた、サイバーヒューマン音楽最前線の作品集に仕上げています。
この“サイバーヒューマン・ミュージック”ともいえる形態の先駆者である
ノア・クレシェフスキーに捧げられた『八つの自動作曲作品集』は、プリペアドピアノ、ハープシコード、チェレスタ、バスクラリネット、フルート、チェロ、バリ島のティンクリックなど、多岐にわたる楽器を複数の仮想アンサンブルで演奏。一見難解にみえる理論的基盤にもかかわらず、その音楽は聴きやすくかつ魅力的で、想像を超える広がりと新鮮さを持っています。
音源はドーランの長年のコラボレーターであるジョー・ウィリアムズ(Motion Graphics、Lifted)がミキシングを行ない、音楽を視覚面から解説するハイパーリアリスティック・アートは日本のヴィジュアル・アーティスト / グラフィックデザイナーの吉澤風生が担当。10インチ・レコード / CD / デジタルのリリースで、10月17日(金)発売予定となっています。なお、CDエディションのみカール・ストーンによるリミックスがボーナストラックとして収録されます。