1月28日、新日本フィルハーモニー交響楽団の公開リハーサルと記者発表会がすみだトリフォニーホールにて行なわれました。今回はプレスだけでなく、ブログやtwitterといった個人の情報発信ツールを持つ一般モニターも多数参加しての開催となりました。
音楽監督
クリスティアン・アルミンクをはじめ、2月のベートーヴェン・プロジェクトを指揮する
フランス・ブリュッヘン、ソロ・コンサートマスターの
崔文洙、そしてオーケストラやホール関係者が一堂に会した記者発表会。まずはブリュッヘンからベートーヴェン・プロジェクトについての説明と質疑応答が行なわれました。
ベートーヴェン・プロジェクトは、2月にすみだトリフォニーホールにて、4回にわたって行なわれるツィクルス。76歳の巨匠ブリュッヘンは、
ベートーヴェンへの思いを以下のように語っています。
「2009年に新日本フィルと行なったハイドン・プロジェクトのときから、次はベートーヴェンだと考えていました。ベートーヴェンはハイドンの後継者。実際に教えを受けたこともありました。両者の関係は必ずしも良好とは言えなかったようですが、ベートーヴェンがハイドンから大きな影響を受けて交響曲を作曲したのは言うまでもありません。ベートーヴェンが交響曲第1番を書いたのは、すでに30代に入ってからでした。その理由は、ハイドンの存在が怖かったからではないでしょうか。同じように、ブラームスもベートーヴェンを怖れていたと言えます」 今回のプロジェクトでは、交響曲第1番から第9番までが番号順に演奏されます(リハーサルは逆の順番、第9番から第1番にさかのぼって行なわれました)。ブリュッヘンは、ベートーヴェンの交響曲について、ユニークな考えを述べています。
「ベートーヴェンは1800年から1824年の24年間に、9曲の交響曲を書き上げました。私は、この9曲にはパターンがあると思っています。第1番はハイドンからの発展で大きな一歩を踏み出した作品。第2番でちょっと後進します。第3番はさらに大きく前進、そして第4番でまた少し後進……このように、9曲は“大きな前進”と“小さな後進”を繰り返しながら進んでいくのです」 このように、ベートーヴェンの作曲過程を作曲順に並べて聴くことのできるツィクルスは、作曲家の本当の姿を我々に見せてくれることでしょう。
次に、アルミンクより9月からの2011/2012年シーズンのラインナップの説明がありました。
「2012年で結成40周年を迎える新日本フィルの来シーズンの主役は“オーケストラ”です。個性豊かな客演指揮者陣を迎え、思う存分オーケストラの魅力を味わっていただけるようなプログラムを組みました。Music Partner of NJPのダニエル・ハーディングをはじめ、すでにおなじみのインゴ・メッツマッハー、ジャン=クリストフ・スピノジ、そしてトーマス・ダウスゴーが初登場となります」 音楽監督がとくにおススメする注目公演は以下とのこと。
「10月にサントリーホールでメッツマッハーが指揮する演奏会は、じつに彼らしい、知的なプログラムになっています。ベートーヴェンの序曲『レオノーレ』第3番、アイヴズ、ショスタコーヴィチを並べ、政治的な意味を多分に含んだ構成ですね。
12月にはトリフォニーホールでフランツ・シュミットの交響曲第2番を私が指揮します。『七つの封印を有する書』がとても好評で、CDの録音もしたので、ぜひ続編をと思いました。
2012年5月のマーラー『嘆きの歌』にもご期待ください。これはマーラー初期の大作ですが、上演が難しく、めったに演奏される機会のないものです。というのも、大編成のオーケストラと合唱、大人数のバンダ、そしてボーイ・ソプラノが必要だからです。この上演のために、資金面も含めて日々努力を積み重ねています」 オーケストラとの関係をしっかり築いている頼もしい音楽監督と、ただ一度きりの客演に終わらない客演指揮者陣。新日本フィルのこれからに、ますます期待大です!