名実ともに“女王”の座にもっとも近いヴァイオリニスト、
イザベル・ファウスト(Isabelle Faust)のニュー・アルバム『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ベルク:ヴァイオリン協奏曲』(HMC902105/輸入盤)がリリースされます。
満を持して2度目の
ベートーヴェン、そして初録音となる
アルバン・ベルクの協奏曲という充実のプログラム。
クラウディオ・アバドから、ぜひにと申し出る形で実現したレコーディングです。
アバド率いるモーツァルト管弦楽団が全身全霊でファウストの音楽を支えているのがよく感じられ、ベルクではオケが爛熟したハーモニーを醸すなか、ファウストが変幻自在な音で飛翔します。彼女独特のタッチが生みだす美しい高音には思わず息をのむほど。
ベートーヴェンでも、何度も聴いたことがあるはずの第1主題から、なんとも神々しい響きを生み出し、第2楽章の天国的な美しい音色はショッキングですらあります。終楽章の活き活きと、そして愛らしさも漂う表情はファウストならでは。カデンツァは、ベートーヴェンがこのヴァイオリン協奏曲をピアノ用に編曲した際に、自身が書いたものにもとづいています。
ヴァイオリン界の新女王、という一言だけでは表現しきれない音楽と魅力的な表情、そして衝撃的に美しい音。ファウストとアバド、モーツァルト管が、神に許された人にしか立ち入ることのできない領域の音楽を展開しています。
──「私がマエストロ・クラウディオ・アバド(マーラー室内管)と共演したのは2008年のことでしたが、この経験は、ベートーヴェンの協奏曲を理解し体験する新しい道を私に見出させました。このあと、アバド氏は、今度はモーツァルト管と、アルバン・ベルクの協奏曲を共演しましょうと申し出てくださいました。この2つの傑作をリハーサルし、コンサートにかける機会を幾度が経たあとで、これら2作品をCDに録音するということは、彼にとって、自然の流れだったようです。この2つの傑作を同時に持ち続けるということは私にとってまったく新しい体験でした。2010年にボローニャで行った幾度にも亘るリハーサルでは、ベルクが終わるとベートーヴェン、という風に、2作品を交互に演奏していました。アルバン・ベルクの、悲しみと苦しみの世界から、バッハの魂の浄化のコラールを経て、ベートーヴェンの最も輝かしく、この世のすべての苦しみから一見解放されたようにみえるフィナーレへの非常に密度の濃い旅は、演奏に携わる私達をこの上なく魅了しました。アバドとの音楽作りは、至上の歓びであり、音楽のマジックを知るための本物の鍵でした。彼が私を信頼して下さったことに心から感謝し、彼の芸術性に心からの賛辞を捧げます。」(イザベル・ファウストのコメント、ライナーノーツより)──