この度、11月15日(土)〜12月27日(土)に東京・世田谷パブリックシアターにて上演する舞台『シッダールタ』の出演者が決定しました。
「人にとって最大の謎は自分が自分自身であるということ」。作品創造・発信型の公共劇場として始動した世田谷パブリックシアターは、活動25余年を経過し、演劇・舞踊・教育普及の分野において日本文化の財産となる作品の創造を行い、先鋭的なかつ実験的な質の高い作品創作を行ってきました。本作は、芸術監督・
白井晃による2025年のメインプログラムとして、ノーベル文学賞受賞作家であるドイツの作家ヘルマン・ヘッセの最高傑作『シッダールタ』を舞台化します。
ヘルマン・ヘッセは、20世紀前半の激動のヨーロッパを生きた作家であり2つの世界大戦に衝撃を受け、インドを訪れたことをきっかけに東洋思想と出会い、自我を探求し思索を深め、古代インドを舞台に宗教家が悟りに至るまでの姿を『シッダールタ』に描きました。
本作では、連続テレビ小説『
らんまん』にて令和5年度文化庁芸術選奨新人賞を受賞した劇作家・長田育恵が、『シッダールタ』の壮大な世界観をベースに、作家自身の思索も補助線として、現代を映す舞台へと昇華。白井晃と長田育恵の初タッグに加え、音楽は世界の名だたるアーティストと創作を共にし活躍を続ける作曲家・
三宅純により、極めて不安定な世界情勢の中、情報の氾濫、価値観の変容、哲学の喪失によって混沌とした世界の中で、宗教とは何か、他者とは何か、そして、個のアイデンティティとは何かを、この作品を通して映し出し、平和主義を唱えたヘッセが『シッダールタ』で何を伝えようとしたかを考えていきます。
主演は圧倒的な演技力を持って数多くの賞を受賞し、昨年公開された映画『
碁盤斬り』でも第48回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞を受賞。近年は舞台『ヴェニスの商人』、『シラの恋文』やNetflixオリジナル映画『新幹線大爆破』でも主演を務める
草剛。白井晃とは2018年の『バリーターク』、2020年・2021年(再演)の『アルトゥロ・ウイの興隆』に続いて3作目のタッグとなり、実在する宗教家で仏陀(釈迦と言われる仏教の始祖ブッダ)と同じ名を持つ青年シッダールタと、「現代を生きるヘッセ」に重なるひとりの男を演じます。
シッダールタの生涯の友となるゴーヴィンダ役は、ドラマ『永遠についての証明』や『
マウンテンドクター』にて主演を務め、現在放送中の『しあわせな結婚』にも物語のキーパーソンである謎の男として出演し、映画『ストロベリームーン』の公開も控える
杉野遥亮。シッダールタと深い関係で結ばれるカマラーには、主演映画『由宇子の天秤』にて国内外で多くの賞を受賞し、今年は、NHK連続テレビ小説『
あんぱん』や、主演作『奇麗な、悪』をはじめ『国宝』、『レイブンズ』、『
敵』、9月に公開を控える『ふつうの子ども』、『宝島』と多数の映画に出演の
瀧内公美。確かな実力で引っ張りだこの2人が、シッダールタの旅に寄り添います。
男の友人デーミアンに、ドラマ『
ダメマネ! -ダメなタレント、マネジメントします-』に出演中で、来年には映画『時には懺悔を』の公開を控える
鈴木仁。シッダールタの息子に現在、連続テレビ小説『あんぱん』やドラマ『最後の鑑定人』で注目を集める
中沢元紀。シッダールタの父に、昨年の世田谷パブリックシアター主催公演『セツアンの善人』にも出演の
松澤一之。シッダールタに商売を教える商人のカーマスワーミに
有川マコト。古代インドの大河の渡し守ヴァズデーヴァに、劇団「はえぎわ」主宰で作・演出・出演を務めながらも、舞台『そよ風と魔女たちとマクベスと』など外部公演にも数多く出演する
ノゾエ征爾。
そして
池岡亮介、
山本直寛、
斉藤悠、ワタナベケイスケ、
中山義紘ら実力派俳優たちが集結。更に唯一無二の振付を体現していくダンサーたちが加わり、壮大な『シッダールタ』の世界を白井晃が立ち上げます。
[コメント]思春期に読んだヘルマン・ヘッセの小説は、常に心の中で息づき自分の創作の原点となってきた作品です。今、この作品を具現化できることに大きな喜びを感じるとともに、その重責に大変緊張もしています。世界を取り巻く現状を見ると、改めて何故この小説に心を掴まれてきたのか、今になってわかるような気がします。彼は、第一次世界大戦期に戦争への反対を表明したことで世間から大きな非難を浴び、結果、東洋思想に惹かれていきました。今、紛争にまみれた混沌としたこの世界の中で、どう自分を生かしていけば良いのか。その問いに対する応えが「シッダールタ」の中に潜んでいると思います。国家とは、宗教とは、他者とは?そして、人にとって最大の謎である、自分自身という存在とは。この模索の道を、劇作家の長田さんと共に思考し、道を切り拓こうと思います。そして、今回参加してくれた素晴らしいキャストのみなさんとの創作の時間は、私にとって珠玉のものとなるでしょう。シッダールタを演じていただく草剛さんとは、これまでも一緒に難作に取り組んできました。それだけに、この旅の労苦を共にできるものと信じています。演劇の可能性は、同世代を生きる人と共に考えることができることだと思います。この作品が、今を生きる私たちにとって、少しでも希望の光を見つける指針であることを心から願っています。――白井晃(演出)今作は「人間とは何か」「地球とは何か」「宇宙とは何か」というような、未知なる壮大なテーマを持った作品で、ひとりの人間としてこの壮大なテーマに立ち向かっていくことにドキドキした気持ちです。自分自身の全力で取り組まないと薄っぺらいものになってしまうと思うので、筋肉を鍛えて(笑)頑張りたいです。
白井さんはいつも僕の可能性を広げてくれる、とても情熱的で素敵な方。今までご一緒させていただいた作品はどれも自分の人生のターニングポイントになってきたので、今回もそんな作品になると期待に胸を膨らませています。迷いやプレッシャーもありますが、未だかつて観たことのない、壮大な舞台をお届けいたします!――草剛