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花冷え。、結成10周年で過去最大規模の主催イベントを開催 新曲「Spicy Queen」も初披露

花冷え。   2025/06/03 12:43掲載
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花冷え。、結成10周年で過去最大規模の主催イベントを開催 新曲「Spicy Queen」も初披露
 5月31日、4人組バンド“花冷え。”が、自主企画イベント〈春の大解放祭 2025〉をKT Zepp Yokohama(神奈川)にて開催。

 2018年にメンバーの高校卒業記念として第1回目をライヴハウス渋谷CYCLONEで開催して以来、毎年恒例となっている〈春の大解放祭〉。今年で結成10周年を迎え、最近は国内だけでなく北米やヨーロッパなど海外もツアーで飛び回り、昨年はアメリカ最大級のフェス〈ロラパルーザ2024〉のメインステージにも出演するなど大活躍の花冷え。とあって、今年の〈春の大解放祭〉は過去最大キャパシティの会場での開催となりました。

 今年の出演者は花冷え。に加え、4s4kiFear, and Loathing in Las Vegas、Fox Lake(from USA)、Knosis、MIGHTY HOPE。さらにDJとも(ex: ヒステリックパニック)とLIFE is SAMPLINGの2組が転換時のDJアクトとして出演。総勢8組による盛大な祭りとなりました。

 カラフルでクールな衣装に身を包み、ラウドなロックもダンサブルなポップも自らの表現に飲み込む花冷え。の姿は貪欲かつ独創性に満ちています。そして同時に、自らの内側にたぎる「衝動」や「好き」、それにアンビバレントな感情も臆せず発露させる彼女たちの姿は、とてもピュアでナチュラル。そんな花冷え。だからこそ生み出し得た数々の越境と出会いがあり、その果てに生み出された幸福な1日、それが〈春の大解放祭 2025〉です。ちなみに、この日の出演順はトリの花冷え。以外は事前に告知されず、当日のお楽しみとなっていました。

[ライヴ・レポート]
 開演時間の15時を過ぎてKT Zepp Yokohamaに入ると、ロビーには物販だけでなくフォトブースやアパレル・フードの出店もあって、空間は完全にお祭り使用だ。開場から開演時間までの会場を温めていたのは、DJともとLIFE is SAMPLINGによるDJプレイ。この日1日を通して交互に転換DJを務めた両者のDJプレイが、会場の空気を音楽で震わせ続けた。

 そして開演時間の16時になり、ライブ本編が始まる。1組目にステージに登場したのは、Knosis(ノーシス)。元Crystal LakeのボーカリストRyoによって2023年より始動した音楽プロジェクトだ。暗雲を切り裂いて差し込む光のように神々しい照明に照らされる中登場した5人バンド編成のKnosisは、獰猛な音塊を会場に突き刺していく。人間のインナーゾーンから湧き出した得体の知れない何かが、音楽やバンドという肉体を通し、まだ見ぬ誰かへと届く――そんな「個」と「世界」を繋ぐ「表現」という回路を開拓し続けてきた表現者Ryo。彼が率いるKnosisのステージは、イベントのトッパーを務めるに相応しい瑞々しい覚醒感で会場を熱狂させた。 「FUHAI」では音源と同じく花冷え。のユキナ(Vo)がステージに登場しコラボレーションを披露。イベントのはじまりを背負う覚悟を感じさせるKnosisの激しくも頼もしいパフォーマンスで、「春の大解放祭2025」は幕を開けた。

 続いては、日本のハイパーポップ代表格といえるアーティスト4s4ki(アサキ)。DJとふたり編成での出演となった彼女は、この日唯一のバンド以外のセットでの出演となったが、その極彩色でカオティックな存在感は花冷え。とも深い場所でのリンクを感じさせるし、何より、そのマッシヴなビートと感情の洪水のようなメロディがもたらす感動はまさに「大解放」と呼ぶに相応しい。エナジェティックなハイパーポップサウンドだけでなく、「風俗嬢のiPhone拾った」ではピアノと歌だけの弾き語りで会場を深い沈黙に誘うなど、表現力の豊かさも圧巻だった。MCで繰り返し語った「死ぬ気でやってるから、死ぬ気でかかってきてほしい」という言葉も印象的だったが、その言葉の後にはじまるのはいつも優しい曲たちで、この優しさや繊細さこそ、4s4kiが死ぬ気で守りたいものなのかもしれない。

 3番手に登場したのは、2020年に結成された3人組バンドMIGHTY HOPE。サポートを含めた4人編成で登場した彼女たちのライブでは、Rico(Vo/Gt)の芯の太さを感じさせる威風堂々とした歌声と佇まい、そして雄大なビートとメロディが描き出す力強いロックサウンドが会場全体を包み込むように響き渡った。スピリチュアルな肯定感と地に足の着いた力強さが込められた、自然光を放つような1曲1曲に生きる力を与えられるようだ。MCで、このイベントに呼ばれたことの意味について語ったRicoの発言の中にあった、「何かわからないけど通じるもの……何かわからないけどカッコいい、綺麗、素敵。そんな想いを私たちは大事にしていて、形にならない何かを追い求めています」という言葉は、きっと「春の大解放祭2025」の根底にあるもののことも言い表していたはずだ。

 4番手はFear, and Loathing in Las Vegas。昨年は自身の対バンツアーに花冷え。を招いたラウドロック界の雄が、今度は花冷え。に招かれ「春の大解放祭2025」に登場した。1曲目の「Return to Zero」から、混沌と調和を自在に操りながら爆発的な盛り上がりを見せるパフォーマンス。狂騒的なビートとメロディで観客たちを翻弄し、興奮の渦に巻き込みつつ、パラパラや「Virtue and Vice」でのタケノコダンスなどユーモラスな振り付けで一体感を生み出すその姿は流石に百戦錬磨のライブバンド。観客たちの中でもみくちゃになりながら咆哮を上げるMinami(Vo, Key)の姿も、グッチャグチャなのに美しかった。今年は9月に阪神淡路大震災から30年の節目として、主催フェス「POWER OF KOBE」の開催も発表しているFear, and Loathing in Las Vegas。背負うものを大きくしていく今の彼らの逞しさと、不変の鮮度で人々を巻き込み続けるそのユーフォリアとカオスを堪能した。

 5番手はアメリカからの参加となったFox Lake。彼らは2023年に行われた花冷え。初のアメリカツアーを共に回ったバンドであり、そんな彼らの初来日公演がこの日のイベントであることに感慨深さを感じる人も多いだろう。4ピースの、ヘヴィでありながらしなやかなバンドサウンドと、Nathan Johnson(Vo)のまるでアジテーションのようなボーカルは、猛烈に聴き手にコミュニケーションを求めていた。「生きている国が違うとか、喋っている言語が違うとか、そんなことは音楽の前では大した問題じゃないんだ」と言わんばかりに、「俺とおまえが生きているってことを教えてくれ」と言わんばかりにFox Lakeは聴き手と音楽の中で語り合い、ぶつかり合い、重なり合うことを求めているようだった。そして、そんなFox Lakeからの切実で情熱的なコミュニケーションの希求に対して、観客たちは熱狂的なリアクションで応える。超密度のコミュニケーションの中から、幸福と尊厳と生の確信を見出していく――そんなハードコアパンクが抱く希望の最も純粋な部分を体感するような素晴らしいパフォーマンスだった。

 そしてトリは「春の大解放祭2025」主催者・花冷え。だ。ステージの上で「最初から今この瞬間まで、幸せです! 幸せです! 幸せです!」と叫んだユキナ。本当に彼女たちの演奏は、1曲目の「超次元ギャラクシー」から最後の「センチメンタル☆ヒロイン」に至るまで、ずっと幸せを噛みしめているようだった。幸せにとろけているわけじゃない。幸せを、歯を食いしばって噛みしめていた。その目は未来を睨んでいた。ユキナ、マツリ(Gt/Vo)、ヘッツ(Ba)、チカ(Dr)の4人は、今にも溢れそうな感情を音に凝縮して爆発させていた。「これがバンドの生き様だ」と言わんばかりに。今という瞬間の奥にある10年の記憶を背負いながら、しかし過去に浸ることなく、決然と未来に突き進もうとする気高さと気品がそこにはあった。2曲目「L.C.G」では、DJとしてこの日1日を盛り上げ続けたとも(ex:ヒステリックパニック)がゲストボーカルとして登場。さらに「今年こそギャル〜初夏ver.〜」では、谷口友朗(トランペット)、小池隼人(トロンボーン)がホーン隊として加わり、ハイパーでダンサブルなサウンドに更なる彩りを加える。終盤に披露された「お先に失礼します。」ではFox LakeのNathanがステージに登場。この日だからこその貴重なコラボレーションも花開くステージだった。

 最新シングル曲「Spicy Queen」を演奏する前に、ユキナは言った。「初めて海外ツアーに行ったアメリカで、ハードスケジュールで心が折れそうだったんです。そんな中で出会ったFox Lakeが今日来てくれたことで、ひとつの目標が叶えられたなと思ってます。アメリカツアーの最終日、あんな激しいハードコアを聴いて、私は涙を流したんですよ」。なぜ彼女が涙したのか、その理由はこの日Fox Lakeのライブを観た人にはわかるはずだ。少なくとも筆者にはわかる。そしてユキナは続ける。「そんな海外ツアーもだけど、日本でも、いろいろなところに行って、いろいろな人に出会って、それはみんなのおかげで。これからしっかり、みんなにもっともっと恩返ししたいと思っています」。そして、この発言を簡潔に英語で言い直した後こう付け加えた。「10年、好きな音楽を作ってこれたことに幸せを感じてます。みんなが着いてきてくれたからです、ありがとう!」。

 花冷え。主催の「春の大解放祭 2025」は、様々な轟音に彩られながらも、とても温かいイベントだった。誰かに押し付けられる「普通」や「正解」をはみ出してオリジナルな人生を生きる気高い音楽家たちが、世代もジャンルも超えて繋がり合う1日だった。「人はひとりじゃない」ということと、「人はひとりなんだ」ということ、どちらの尊さもしっかりと伝えてくれるお祭りだった。その中心にいたのは花冷え。で、彼女たちの10年間の爆走の歴史が、この温かい1日を生んだのだった。その偉大な歴史は、これからさらに更新されていくはずである。

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文: 天野史彬
撮影: オカベメイ


花冷え。「Spicy Queen」
配信URL
hanabie.lnk.to/SpicyQueen
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