ギターポップ・バンドの王道サウンドと耳に馴染みむメロディと声で人気を集めるニュージーランド出身の4人組バンド、ザ・ベス(The Beths)がANTI-レーベルより8月29日(金)にアルバム『Straight Line Was A Lie』をリリースすることを発表。収録曲より、新曲「No Joy」をミュージック・ビデオとともに公開しています。
2022年発表の前作『Expert In A Dying Field』は、批評家から絶賛され、年間ベストリストにも取り上げられましたが、そこから今回のアルバムに至るまでの道のりは、平坦なものではありませんでした。エリザベスは、携帯電話に保存したアイデアを楽曲に導くことができず、スランプに陥いり、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を服用。それにより精神的・身体的な健康から、家族関係まで、人生の中で壊れているすべてのことを“修復できる”ような感覚が得られた反面、以前のようにはスムースに作詞ができなくなってしまいました。エリザベスは「まるで〈新しい脳〉と向きあっている感覚。私はかなり本能的に書くタイプなんだけど、その思考がちょっと変わっちゃってた感じ。前ほどパニックにはなっていないのだけれど」と振り返っています。
SSRIによって大きな安心を得たいっぽうで得た代償を、彼らは新曲「No Joy」で表現しました。ドラマーのトリスタンの力強いパーカッションとともに「今年で私は死ぬ/死ぬかもしれない(This year’s gonna kill me / Gonna kill me)」というインパクトの強いフレーズが響きますが、エリザベスは「快楽消失(アネドニア)についての曲。この感覚は、うつの最悪の時期にも、SSRIで感覚が麻痺していたときにもあった。悲しかったわけじゃない。気分はむしろ良かったの。ただ、自分の好きだったものが、好きになれなくなったというか。喜びを見いだせなくなってしまった。つまり文字通りの意味を持っている楽曲」と楽曲を説明しています。
この楽曲を含むアルバムを制作するにあたり、彼らはこれまでのプロセスを一新することを決意。インスピレーションを得るために、スティーヴン・キング『書くことについて(On Writing)』、ベント・フリヴビャールグとダン・ガードナーの『How Big Things Get Done』、ロバート・A・カーロの『Working』を読みました。
また、彼らはこの期間、ライヴに出かけ、黒澤映画のCriterionクラシックを観たり、Drive By Truckers、The Go-Go’s、オリヴィア・ロドリゴを聴きましたが、さまざまな創造的インプットの波に身を委ねることは、エリザベスにセラピーのような効果をもたらしたとのこと。エリザベス「こんなにたくさんアイデアを書き出すことで、普段は見たくないものに向きあわざるを得なくなった。過去のこと、自分の記憶の中のこと。普段は考えたくないようなことや、思い出すのが怖いようなこと。それらを私は紙に書き出して、それについて深く洞察していた」とコメントしています。
これまでエリザベスは、「Future Me Hates Me(未来の私は私を嫌う)」や「Expert In A Dying Field(滅びゆく分野のエキスパート)」といった皮肉と洞察に満ちたタイトルで、長年にわたりファンや批評家たちの目を引きつけてきました。今回、彼女は意図的に自らの「書くこと」への関係を分解、再構築させたことにより、その表現を深め、驚くほどの洞察力と脆さが増し、これまでのザ・ベスの作品の中で最も鋭く観察的で、誠実で、詩的なアルバムに仕上げています。
[収録曲] 01. Straight Line Was A Lie 02. Mosquitoes 03. No Joy 04. Metal 「Metal」のMV 05. Mother, Pray For Me 06. Til My Heart Stops 07. Take 08. Roundabout 09. Ark Of The Covenant 10. Best Laid Plans