この秋最大の話題になるであろうプロジェクト〈ポリーニ・パースペクティヴ2012〉の開催がいよいよ目前に迫ってきました! 現在ポリーニは北京に滞在中、17日にNCPA(國家大劇院)にてリサイタルをしたのち来日し、10月23日(火)から東京・サントリーホールにて一連の公演がスタートします。
今年1月に70歳の誕生日を迎えたピアノの巨匠、
マウリツィオ・ポリーニ(Maurizio Pollin)。持ち前の透徹した音色はそのままに、近年ではまろやかさを増し、みずみずしくため息が出るような円熟の境地を聴かせてくれています。
昨年のルツェルン音楽祭やパリでスタートし、ついに今回東京で行なわれる〈ポリーニ・パースペクティヴ〉は、ポリーニの“ニつの面”が統合されたプロジェクトだと言えるでしょう。つまり、透明な音と超絶的技巧によって作り出される“完璧の体現者”という一面、そして、それまで誰もやらなかった方法や語法で作られた音楽を紹介する“革新的音楽の使徒”という一面です。
その“ニつの面”から生まれたのが、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタと現代音楽とを組み合わせたコンサート・プロジェクト、〈ポリーニ・パースペクティヴ〉。現代音楽には、今回のために現代を代表する作曲家で朋友のマンゾーニやシャリーノに書いてもらった新作、および
シュトックハウゼン、ラッヘンマンの傑作などがプログラムされています。
ポリーニはベートーヴェンを“革新”の最たる作曲家であると考えています。ベートーヴェンは1曲たりとも似た曲を書こうとせず、絶えず新しいことに挑戦し続けた作曲家であり、ベートーヴェンの作品と現代の音楽の“革新的”な面には通じ合うものがあるという考えを形にしたものが〈ポリーニ・パースペクティヴ〉なのです。
「新しいものを創り出す姿勢を、時代を超えて展望(パースペクティヴ)してほしい」。それがポリーニの強い強い願いです。
「現代音楽が聴衆によりよく伝わるためには、演奏家自身が納得する完成度と確信をもって、最高の演奏をしなくてはならない。確信をもって演奏すれば必ず伝わる」と語っているポリーニ。そのために、今回現代音楽を演奏(または共演)するのは、ポリーニ自身が選び抜いた、それらの曲にとって最高のアーティストばかりです。
クラングフォーラム・ウィーン、シュトゥットガルト・ニュー・ヴォーカル・ソロイスツといった現代音楽ファンにはこたえられないアンサンブルをはじめ、アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーを務めたクラリネットのアラン・ダミアンやヴィオラのクリストフ・デジャルダン、クロノス・カルテットやアルディッティ四重奏団に教えを受けた新鋭、ジャック四重奏団など。
それから、当初の予定ではポリーニ自身が弾くはずだった、マンゾーニ「Il rumore del tempo」とシャリーノ「謝肉祭」第10、11、12番は、ポリーニの指名により現代曲の演奏で高い評価を誇るニコラス・オッジと、息子ダニエレ・ポリーニが弾くことになりました。
こうした名手たちの手にかかると、「なんだか難しそう」というイメージの現代音楽が、パズルを解くように、緻密なミステリーの謎解きをするように、「あれ、面白いかも!」と思えるようになることでしょう。
さらに、ポリーニがベートーヴェンのピアノ・ソナタを集中的に数多く弾くのは、1998年以来という点にも注目です。
〈ポリーニ・パースペクティヴ2012〉の特設サイトでは、ポリーニ自身がこのプロジェクトについて熱く語っているインタビュー動画を公開中。ぜひそちらもチェックしてみてください。
皆さんもポリーニとその仲間たちともに、新たな音楽の体験をしてみてはいかがでしょう?