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ザ・フー、ZEP、デヴィッド・ギルモアが映画館に集結 秋を彩る音楽映画たち【前編】

2025/09/12掲載
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今秋に上演される音楽映画にはどんなものがありますか?
ザ・フー、ZEP、デヴィッド・ギルモアが映画館に集結 秋を彩る音楽映画たち【前編】
 この秋は音楽映画が豊富です。9月12日からのピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティバルを皮切りに、9月26日は日本では劇場未公開のザ・フーキッズ・アー・オールライト』とレッド・ツェッペリン誕生の軌跡を追う『レッド・ツェッペリン:ビカミング』が同日公開、10月はザ・ローリング・ストーンズのミューズに迫る『アニタ 反逆の女神』が封切りと、ロック・ファンにとって奇跡的なラインナップが続きます。シートに座って、抜群の音響でロックに浸れる喜び、映画館によってはアルコールも……そんな素敵な2025年の“秋の音楽体験”を2回にわたって紹介。今回はその前編です。

 まずは、9月12日(金)〜25日(木)の2週間、東京・角川シネマ有楽町にて音楽映画を上演する「Peter Barakan's Music Film Festival 2025」です。5年目を迎える2025年は、名曲「17歳の頃」で知られるジャニス・イアン、78歳で亡くなったマリアンヌ・フェイスフル、86歳で最新作『サッド・アンド・ビューティフル・ワールド』を発表したばかりのメイヴィス・ステイプルズと、女性シンガーを描いた3作のドキュメンタリーに加え、レス・ブランク監督『ルイジアナピリ辛 クリフトン・シュニアの世界』『テックス・メックス アコーディオン天国』の2本、ニューオーリンズの天才ピアニストの才能に迫る『ジェイムズ・ブッカー ニュー・オーリンズのピアノ王子』の6作が日本初公開となります。


 なかでもマリアンヌのドキュメンタリーは、追悼の意を込めて観覧したい作品。10月には“ローリング・ストーンズの女”と呼ばれたアニタ・パレンバーグのドキュメンタリーも公開されるので、2人の女性の壮絶な生きざまに触れることができます。アイドルとして60年代イギリスを駆け抜け、ミック・ジャガーとの熱愛やドラッグに溺れた日々を経て、70年代に迫力のハスキー・ヴォイスとともに蘇ったマリアンヌ。復活を印象付けた1979年作『ブロークン・イングリッシュ』では、ジョン・レノン「労働階級の英雄」のカヴァーや、パンキッシュな「ホワイ・ジャ・ドゥ・イット」などで、そのしゃがれ声の魅力を味わうことができます。


 『テックス・メックス アコーディオン天国』では、7月に逝去したフラーコ・ヒメネスの圧巻の演奏も捉えています。“アコーディオン界のチャック・ベリー”とも言われたフラーコの演奏は、ラテンの底なしの高揚感にあふれたもの。フラーコ・ヒメネスは、5月に10代後半の演奏と歌声を収めた貴重な初期音源集『フラーコズ・ファースト!』が発売されており、10月12日(日)にはグラミー賞受賞作品全曲を収録した追悼盤『サン・アントニオにあなたを残して』もリリースされます。

 本映画祭では、ブライアン・イーノによる“見るたびに内容が変わる”映画『Eno』やレコードジャケットを芸術に高めたデザイン集団を描いた『ヒプノシス レコードジャケットの美学』など、アートの面白さも伝える作品も公開。ぜひ公式サイトで豪華な作品の数々をチェックしてみてください。

 次に、9月17日(水)より、映画音楽の巨匠ミシェル・ルグランの素顔に迫る『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』が公開。『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』をはじめ、『女は女である』などのゴダール作品や初のアカデミー賞受賞作『華麗なる賭け』など、200超の映画やTV音楽を手掛けた偉大なる作曲家の創作の舞台裏を描いています。公開を記念し、9月19日(金)よりレトロスペクティブ上映としてシェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』『ロバと王女』が再上映されます。


 そして、9月17日(水)と18日(木)には、ピンク・フロイドのリーダーを務めるレジェンド、デヴィッド・ギルモアによるライヴ・フィルムがIMAX仕様で公開。2024年のソロ・アルバム『邂逅』に伴うワールド・ツアー〈ラック・アンド・ストレンジ・ツアー〉よりイタリア古代ローマ時代の遺跡チルコ・マッシモ(別名:キルクス・マクシムス)でのスペシャルコンサートを収めた映像作品『デヴィッド・ギルモア・ライヴ・アット・ザ・チルコ・マッシモ』を上映。ギルモアのソロ・アルバム『邂逅』『飛翔』からと、ピンク・フロイド楽曲が、それぞれ半々に全22曲が148分のなかで演奏されます。大スクリーンの圧倒的な臨場感とダイナミックかつ繊細なサウンドによる“最初で最後”のIMAX上映は、壮大な映像体験となるでしょう。


 また、すでに公開中ですが、いま一度お知らせしたいのが『KNEECAP/ニーキャップ』です。検閲や警察の捜査対象にもなる過激な言動や、アイルランド語による政治的風刺の効いたリリックとパンク精神を融合したスタイルがうけ、ライヴは軒並み完売という、北アイルランドのラップ・トリオ“ニーキャップ”が本人役で出演する半自伝的物語で、“北アイルランド版『トレインスポッティング』”とも評されています。2022年まで公用語に認可されなかったアイルランド語と自らのアイデンティティのために闘う姿が痛快と共感を呼ぶだけでなく、モ・カラ、モウグリ・バップ、DJプロヴィからなるトリオへの愛着も生まれそうな作品となっています。

 なお、ニーキャップは、2026年開催のフェス〈rockin'on sonic 2026〉への出演も発表されています。劇中で印象的に用いられるIRA暫定派のスローガン「ブリッツ・アウト!」(イギリス人は出ていけ)をもじった「ゲット・ユア・ブリッツ・アウト」をはじめ、自由な表現が詰まった1stアルバム『ファイン・アート』の楽曲やデビュー・シングル「C.E.A.R.T.A」も収録されるサウンドトラックは、映画のみならずフェスの“予習”としても最適です。



 後編では、9月後半から公開される映画を中心にご紹介していきます。

「Peter Barakan's Music Film Festival 2025」
公開期間:2025年9月12日(金)〜9月25日(木)
公開劇場:角川シネマ有楽町

pbmff.jp

『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』
公開日:2025年9月19日(金)
公開劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:アンプラグド

unpfilm.com/legrand

『ミシェル・ルグラン×ジャック・ドゥミ レトロスペクティブ』
公開日:9月19日(金)
公開劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ/アンプラグド

unpfilm.com/legrand

『ラック・アンド・ストレンジ・ツアー』
公開日:2025年9月17日(水)グランドシネマサンシャイン 池袋ワールド・プレミアIMAX上映
2025年9月18日(土)IMAX上映

110107.com/s/oto/page/Gilmour_live_movie?ima=4735

『KNEECAP/ニーキャップ』
公開日:2025年8月1日(金)
公開劇場:新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開:新宿武蔵野館ほか全国で順次公開
配給:アンプラグド

wowow.co.jp/film/liam-gallagher
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