6月9日は、女優や歌手として活躍している
薬師丸ひろ子のバースデーです。その音楽活動を中心に振り返ってみましょう。
中学時代にオーディションで優勝を勝ち取った薬師丸は、1978年に
高倉健主演の角川映画第3弾『
野性の証明』にて13歳で女優デビュー。当時TV-CMで流れた「お父さん、怖いよ。何か来るよ……」のセリフも大いに注目されました。80年に
鶴見辰吾とのダブル主演となった『
翔んだカップル』で映画初主演を果たすと、翌年に『
ねらわれた学園』、『
セーラー服と機関銃』でも主演を務めました。リリース前から予約が殺到していた『セーラー服と機関銃』の主題歌「
セーラー服と機関銃」で歌手デビューすると、1982年度の年間2位のビッグヒットを記録。薬師丸の以降の歌手活動に弾みをつけるのに十分なものとなりました。
『セーラー服と機関銃』の主題歌は、当初は
来生たかおが作曲し、来生自身が歌う「夢の途中」となる予定でしたが、急遽薬師丸の歌唱に変更。「夢の途中」を「セーラー服と機関銃」に改題(一部歌詞変更)してリリースされました。それとほぼ同時期に、来生も「
夢の途中 -セーラー服と機関銃」としてシングルを発表。薬師丸の「セーラー服と機関銃」のヒットを追従するように、こちらもロングヒットとなりました。
のちに、2000年にリリースされた来生のデビュー25周年記念シングル「
地上のスピード」には、来生と薬師丸のデュエットによる「夢の途中」を収録。同曲は来生のアルバム『
Dear my company』でも聴くことができます。
薬師丸は『セーラー服と機関銃』を皮切りに、『
探偵物語』『
メイン・テーマ』『
Wの悲劇』に主演し、その主題歌を歌唱していきます。『探偵物語』の主題歌「探偵物語」は
大瀧詠一が作曲を、『Wの悲劇』の主題歌「
Woman "Wの悲劇"より」は呉田軽穂(
松任谷由実)が作曲を担当し、どちらも
松本隆が作詞を手掛けるなど、豪華作家陣が参加した楽曲は、軒並みヒットを連発。主演女優による主題歌歌唱というスタイルを定着させました。
1984年には、薬師丸初のオリジナル・アルバム『
古今集』を発表。最初に発売された盤には「セーラー服と機関銃」「探偵物語」などのシングルはなく、全曲オリジナル楽曲を収録して、歌手としての真の出発となる一枚となりました。同アルバムには、薬師丸の代表曲のひとつとなった、
竹内まりやによる「元気を出して」も収められています。竹内は、1987年のアルバム『
REQUEST』で「元気を出して」をセルフカヴァーしていますが、コーラスには薬師丸も参加しています。
角川映画から独立した後は、アイドルから女優として着実に歩みを進める一方、音楽番組やCMにも数多く出演。1985年に自身が出演し、民営化したNTTのCMソングにも使われた「あなたを・もっと・知りたくて」では、曲中に登場する「もしもし、私、誰だかわかる?」のセリフも耳目を集めました。1989年にはデビュー曲「セーラー服と機関銃」以来となる作詞・来生えつこ、作曲・来生たかおによる楽曲「語りつぐ愛に」を発表。2時間ドラマ『水曜グランドロマン』のテーマ・ソングに起用されました。
90年代は『
病院へ行こう』『
タスマニア物語』『
きらきらひかる』などの映画で演技が高く評価されると、『ミセスシンデレラ』からは連続TVドラマへも出演するようになります。2000年代以降は映画『
木更津キャッツアイ』『
ALWAYS 三丁目の夕日』、ドラマ『
あまちゃん』『
アンナチュラル』『いだてん〜東京オリムピック噺〜』『
エール』など、数々の話題作で存在感を発揮。日本を代表する女優の一人として名を馳せています。
歌手としては、『古今集』からコンスタントにアルバムをリリース。2000年代に入ってからは久しくオリジナル・アルバムのリリースがありませんでしたが、2011年に歌手活動30周年記念アルバム『
歌物語』を発表すると、2013年には芸能活動35周年記念コンサートを開催し、初のカヴァー・アルバム『
時の扉』をリリース。翌2014年末には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、「Woman "Wの悲劇"より」を歌唱。2016年には奈良・春日大社にて第六十次式年造替奉祝のコンサートを行ないました。
2018年には久しぶりのスタジオ・アルバム『
エトワール』を、2024年には『
Tree』をリリースしています。2022年からは毎年コンサートツアーを行なっており、2025年も9月の千葉・松戸公演を皮切りに、11月末の東京公演まで〈Concert Tour 2025〜はるか〜〉を開催予定です。
女優としての活躍とともに、2026年に歌手活動45周年を迎える薬師丸の歌声にも、一層期待が高まります。
(写真は「
セーラー服と機関銃」オリジナル・サウンドトラック』)