2016年6月に創立60周年を迎える名門オーケストラ、
日本フィルハーモニー交響楽団。アニバーサリー・イヤーである同年9月より、気鋭の指揮者
ピエタリ・インキネン(Pietari Inkinen / 現・首席客演指揮者)を首席指揮者に迎えることが、4月20日(月)都内で行なわれた記者会見で発表されました。任期は3年を予定しており、2015/16シーズンは首席客演指揮者として契約を延長するとのことです。なお、現首席指揮者
アレクサンドル・ラザレフ(Alexander Lazarev)は、2016年9月より桂冠指揮者兼芸術顧問に就任します。
日本フィルを選んだ理由について、インキネンは次のように語りました。
「数多くのオーケストラを世界中で指揮しているなかで、私にとっていちばん大切なことは、最初の出会いなのです。日本フィルとの最初の出会いのときから、お互いに息がぴったり合い、お互いの音楽に対する情熱が共鳴するところを強く感じたので、首席客演指揮者の話が出たときすぐにOKのサインを出しました。そこから年月を経て、今回こうして首席指揮者になれたことは、自然の流れだと思います。日本フィルとの音楽的な絆も年月ごとに深まっていると思うので、今回さらに長期的な計画をいっしょに立てられることがすばらしい演奏への第一歩になると信じています。それからもちろん、私は日本という国が大好きです。日本人の優しさをいつも感じて、日本に来ることをいつも楽しみにしています。日本フィルのマネージメント、スタッフの皆様の温かさ、皆様が一丸となって取り組む姿勢……また、日本にはすばらしいホールもたくさんあります。そういったことが、今回首席指揮者を承諾した大きな理由です」(インキネン) 首席指揮者就任後は、これまでも継続的に取り組んできたシベリウスに加え、2013年9月の東京定期演奏会での『ワルキューレ』の大成功を踏まえ、
ワーグナーの世界にも踏み込んでいく予定と語ったインキネン。さらに、
ブラームスや
ブルックナー、
R.シュトラウスといった、重厚で深みのあるロマン派の音楽や、オーケストラの基盤ともいうべき古典派にも積極的に取り組んでいくそうです。また、演奏にとどまらず、若いオーケストラ・プレイヤー育成を目的とした新たなプロジェクトの提案など、エデュケーションにも力を入れたいという強い意向も表明しました。今後の動向にますます注目が集まります。
インキネンが日本フィルに首席指揮者として初登場する定期演奏会は、2017年1月。2016年9月の首席指揮者就任から少し間があいてしまうために、特別な就任披露演奏会“ワーグナー・ガラ・コンサート”を2016年9月27日(火)サントリーホールで催す予定とのことです。プログラムは、インキネン自身が中心に据えてやっていきたいと熱く語ったワーグナーをメインに特集するもの。『ワルキューレ』で絶賛を博した
サイモン・オニールがもう一度出演する、注目間違いなしの公演です。
4月22日(水)には、2013年に行なわれたインキネン&日本フィルによるシベリウスの交響曲チクルスの録音
『ジャン・シベリウス:交響曲全集』(NYCC-27286 4,800円 + 税)が満を持して登場します。シベリウスは、フィンランド出身のインキネンにとっても、そして『シベリウス交響曲全集』を日本フィル創設者である渡邉暁雄と世界初ステレオ録音で行なった日本フィルにとっても、ゆかりの深い作曲家。両者の熱い思いが完璧なサウンドとなって顕現した、充実のアルバムです。
また、2016年1月には、2015年9月より首席指揮者を務めるプラハ交響楽団とともに来日。プラハ交響楽団は11回目の来日ですが、インキネンとの来日は初となります。こちらも要注目です。