最近では
JUJUのヒット曲「PLAYBACK」を作品提供するなどソングライターとしての活躍でも知られるR&Bシンガー、
為岡そのみの新曲「Last Scene」

が配信スタート。制作側にいることも多い彼女、作詞・作曲は自身が手がけつつ、今回は大御所・
角松敏生をプロデューサーとして迎えています。
揺れる女心を描き出した切なくも現実的なリリックを背景に、時代や世代を越えて支持される日本ポップス界の至宝・角松敏生のサウンドをマッチさせた、強烈なディスコ・サウンドが響きわたる「Last Scene」。ぜひご注目ください。
昨今の本邦のアーティスト、特にシンガーはジャンルが特化していてつまらない。君ら一生ヒップホップか、君ら一生R&Bか、みたいなね。なんでもできるやつはいないのか? 職人気質なやつはいないのか? どんなジャンルを歌っても、自分のものとして表現できるやつはいないのか? 美空ひばりみたいな歌い手はいないのか? いないもんだ。為岡そのみも、そんな昨今のR&B系シンガーかと思っていたのだが、全然違った。彼女は僕から見ればかなりの若手に入る部類だが、作家としてアーティストとして実に多岐に渡る仕事をこなし、経験している。多分その中で、多くの事を学んだのだろう。初めて会った時、苦労人だな、こいつは。と直感した。当初は、R&Bに一家言ある小難しい小娘かと想像していたのだが、実はとてもフレキシブルで柔軟性があって、なにより社会的に賢い。様々な音楽を聴いて消化して非常に良い育ち方をしているのだ。そういうアーティストは僕らの世代にとっても安心して仕事ができる存在だ。彼女はどんなジャンルの歌にも挑戦できて、考え方も柔軟だ。何より、絶対音感を持つピアノ奏者であるという側面が、基礎体力として彼女の音楽的素養を支えている。つまり、プロとして信用に値する歌い手であり、作家である、ということだ。だから私は、敢えて昨今の若いトラックメーカーがやらない、できない、手法を用いた。80年代初頭の歌謡曲が当時の洋楽の手法を真似ていた時代の方向性を適用するのがおもしろいと思った。なんのことはない、僕自身、いい歌い手に出会って喜んで遊んでしまっていたわけだ。彼女は作家であり、歌い手であり、まぁ、アーティストと呼ぶにまさにふさわしい存在なのだが、僕は敢えて彼女をミュージシャンと呼びたい。――角松敏生