イ・ムジチ合奏団が、ヒロシマ・ナガサキ被爆80年に寄せたアントニオ・マルコトゥッリオ作曲の「The Two Flowers(二輪の花)」を9月の来日公演で世界初演します。この曲は、広島・長崎の被爆から80年という節目に、音楽を通じて平和への願いを伝えるべくイ・ムジチ合奏団が開催した作曲コンクール「I Musici International Call for Scores 2025!(イ・ムジチ作曲コンクール2025)」の優勝作品。
コンクールの開催に際して、イ・ムジチ合奏団のチェンバロ奏者。フランチェスコ・ブッカレッラは「たとえ悲劇的な出来事の記憶からでも、何か美しいものが生まれ、後世に受け継がれていきますように。私たちと同じように、音楽を通して平和への願いを育んでいる作曲家のひらめきから生まれるもの、それは尊い人間の心の創造物なのです」とコメントしていました。
また優勝作品の「The Two Flowers(二輪の花)」を作曲したイタリアの作曲家、アントニオ・マルコトゥッリオは受賞作について以下のコメントを発表しています。
[コメント]この作品は、ヒロシマとナガサキという二つの都市がたどった「破壊」と「再生」の運命に着想を得た、4つの楽章から成る組曲です。この二都市は、無防備な市民に対して原子爆弾が使用されたことによる悲劇の、普遍的な象徴として世界に知られています。
第1楽章では、穏やかな8月の朝に太陽が静かに昇る情景が描かれます。広島と長崎の人々が日常の中で目を覚まし、新たな夏の日を迎えようとする静かな時間が流れます。彼らは、まもなく自らが歴史的悲劇の中心に置かれることをまだ知りません。
第2楽章では、爆発という決定的な瞬間が描かれます。激しい音のうねりと緊張感あふれる対位法により、破壊の衝撃が音楽として表現されます。
第3楽章では、「痛み」を描写します。哀悼と祈りに満ちた音調の中で、各パートが親密に対話を重ね、深い悲しみと喪失を静かに奏でます。
第4楽章では、「再生」の情景が描かれます。日本人の勤勉さと精神的な強さによって、破壊された都市が再び立ち上がる姿を音楽が力強く語ります。
「二輪の花」というタイトルには、たとえ花が摘まれても種から再び咲くように、ヒロシマとナガサキもまた内に宿した力によって甦り、かつての輝きを取り戻したという希望が込められています。
作品は最初の静けさへと回帰しながら終わります。これは復興を果たした都市に再び訪れた穏やかな日々と、全世界の人々が戦争の記憶を通じて、平和と連帯、そして真の協力関係を築くことへの願いを象徴しています。――アントニオ・マルコトゥッリオPhoto by Gulcan Acar