10月11日(土)“永遠のアイドル”
麻丘めぐみが古希(70歳)を迎え、誕生日当日に東京・渋谷JZ Bratでアニバーサリーライヴを開催しました。
昨年11月に行われた15年ぶりの単独ライヴに続き、〈めぐみのジューク★ボックス2025〉と銘打った今回の公演もチケットは完売。会場にはこの日を待ちわびた多くのファンが全国から詰めかけました。
[ライヴ・レポート] キュートなスマイルと歌声はフォーエバー。オーディエンスに、そう印象付けたスペシャルなステージだった。
午後3時、ジャズファンクの名曲「テル・ミー・ア・ベッドタイム・ストーリー」がオーバーチュアとして演奏されるなか、赤いジャケットに黒のスパンコールスカート姿の本人が登場。1972年の日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞したデビュー曲の「芽ばえ」を歌い始めると、満場の客席から大きな拍手と声援が送られた。
1年ぶりのライブを緊張して迎えたという麻丘は「かつてあったジュークボックスはいろんな音楽を届けてくれました。公演名にはジャンルを超えて歌いたという想いを込めていますが、最近は昭和歌謡が人気を集めているようなので、今日はインスタグラムを通じてリクエストをいただいた曲もたくさん歌います」とあいさつ。今回が初共演となる気鋭のミュージシャン4名を紹介したあと、いしだあゆみ「あなたならどうする」、南沙織「潮風のメロディ」、郷ひろみ「よろしく哀愁」、アン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」、沢田研二「危険なふたり」の5曲をカバーした。歌の合間には5人の歌手とのエピソードや、生放送の歌番組が連日オンエアされていた昭和の歌謡界の裏話も披露。この日来場していた平成生まれの若いファンには新鮮だったに違いない。
古希の色とされる紫のロングドレスに衣装替えした第2部は、恩師・筒美京平から提供されたオリジナル曲のメドレーからスタート。アイドル時代の振付をそのまま再現しながら客席をラウンドして、会場を大いに盛り上げた。
ヒットパレードに興奮した観客からの「カコちゃん!」(本名に由来する愛称)コールがやまぬなか、サプライズでケーキが運び込まれ、「♪ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」を大合唱。この日のために用意された特製カクテル(ノンアルコール)を手にした麻丘の発声で乾杯をすると、場内からは「生まれてきてくれてありがとう!」の声が飛ぶ。
「まさか70歳になっても歌っているとは夢にも思っていませんでした。ここまで来られたのは支えてくださった皆さんのおかげです」と感謝を述べた麻丘は「60代は悩むこともたくさんありましたが、『考えてもしかたない。人間なるようにしかならないのだから、一日一日を精いっぱい生きればいい』と思うようになったら楽になりました」とコメント。母親を見送ってからは好きなときに動画配信サービスを利用するなど、一人暮らしをエンジョイしているという。
その後はファンの間で人気が高く、本人もお気に入りのアルバム曲「街角」と、芸歴60年を記念したアルバムに新曲として収められた「フォーエバー・スマイル」を歌唱。新曲に関しては「今の自分が歌えるとしたら自分への応援歌ではないか。そう考えて作詞の松井五郎さんに思いの丈をお伝えしました」と制作の背景が明かされた。本公演の音楽監督を務めた坂本貴啓(Per)によると、会場の雰囲気も考慮してルバート(テンポをゆらす)にアレンジしたとのこと。本番に向けて打ち合わせやリハーサルを重ねるなかで、麻丘と一緒に作り上げていく喜びを味わうことができたという。
若いミュージシャンとの幸福なマリアージュが随所に感じられた今回のライブは代表曲の「わたしの彼は左きき」で本編を終了。鳴り止まぬ拍手とアンコールの声に応えて再び登壇した麻丘は「今日は笑顔で一緒に口ずさんでくださった皆さんにパワーをいただけました。オリジナルのキーで歌うのは大変ですけれども(笑)、これからも声が出る限り歌い続けます。また逢いましょう!」と約束し、ヒット曲の「悲しみのシーズン」と尾崎紀世彦の「また逢う日まで」で記念のライブを締めくくった。