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Perfume、東京ドーム公演ライヴ・レポート これからも3人はこれまで通り、いつだってありのままで輝いていく

Perfume   2025/09/25 14:37掲載
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Perfume、東京ドーム公演ライヴ・レポート これからも3人はこれまで通り、いつだってありのままで輝いていく
 Perfumeが、2025年9月22日・23日に東京ドームにて〈Perfume ZO/Z5 Anniversary "ネビュラロマンス" Episode TOKYO DOME〉を開催。

 このたび、オフィシャル・ライヴ・レポートが公開されています。

[ライヴ・レポート]
 ラストを飾ったのは「巡ループ」だった。何色に染められても怖くない。そんな根本の強さを表す純白のドレスで歌い、踊った3人。エンディングの本を閉じる仕草のなんと美しかったことか。その瞬間、満杯の東京ドームは大きな拍手とは裏腹の厳かな静けさに包まれた。みなが息を呑み凝視する中、幻想的な「GISHIKI」に包まれて、アリーナの十字の花道をセンターから別の三方へ、ベールを掲げながらゆっくりと歩み出す3人。まるでバージンロードを進むかのように。あ! 衝撃的なデジャヴ感。これは2010年の初の東京ドーム「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」のオープニングの逆回しではないか。

 あのときカウントアップで十字路の中心に向かい、Perfumeとまるで結婚を誓うかのような意思を示した3人が、今度は「25 24 23 ・・・」とカウントダウンで、新たな誓いを胸にそれぞれの道に向かい、やがて光の粒となった。三方に残ったのは煌めくドローンがかたどるあの3人の立体的なアイコン。追いかけるように「SEE YOU AT THE NEXT STAGE」といつもの文字が。いつかまた巡り来るその日まで、3人に幸あれとそこにいる誰もが祈ったに違いない。その愛に寄り添うように、3体のアイコンはいつまでも浮遊し続けていた。

 デビュー20周年、結成25周年を迎えたPerfumeが、9月22日、23日、5年ぶり4度目となる東京ドーム公演「Perfume ZO/Z5 Anniversary "ネビュラロマンス"-Episode TOKYO DOME-」を行った。デビュー記念日の9月21日には、「自分たちが胸を張って“輝いている”と思えるこの瞬間を刻むため、私たちは2026年からPerfumeを一度コールドスリープします」と発表。周年を祝う晴れやかな舞台を活動休止前最後のライブとしたのは、まさに「この瞬間を刻むため」だろう。この1年の動きを辿ってわかるのは、実にPerfumeらしい区切りのつけ方だったということ。

 まず、2024年秋、この周年に向けて新作のコンセプト・アルバム『ネビュラロマンス前篇』をリリース。それを携えて、2025年前半には作品をサントラに見立てたSF映画とも言うべき物語仕立てのツアーを敢行。周年に甘んじないチャレンジングな姿勢は多くの人々をうならせた。さらにこの秋には、続編『ネビュラロマンス後篇』をリリース。今回の東京ドーム公演は、アルバム2枚に渡る謎多き物語を完結させる場でもあった。周年であろうがなかろうが、Perfumeはずっとワクワクするようなライブの表現形態を更新してきた。「私たちPerfumeの全ての活動の中心はLIVEにあります」を身をもって恬淡と証明して続けていたのだ。

 ここで、『ネビュラロマンス前篇』のあらすじを紹介しよう。物語の舞台は危機的状況にある未来の地球と宇宙。「ロボットアーミー」に占拠された月から奇跡的に脱出し、地球で「コールドスリープ」から目覚めた旧人類の少女3人(アヤカ、ユカ 、アヤノ)は、自分たちが何者かの記憶もなく科学者「キキモ」によって育てられる。ダンスに夢中になった3人は「Perfume」として、今や地球を占める機械人間の新人類からも愛される存在に。しかし、その裏で、かつて旧人類を滅亡させようとした「カキモト」との戦いを運命づけられていた。後篇はここから。

 と、準備万端でいたら、聞こえてきたのは「もう一度あの日から始めよう」の声。1曲目は「GAME」だった。2020年の東京ドーム「“PCubed” in Dome」でも冒頭を飾ったが、コロナ禍で2日目が中止となり、多くの人にとって幻となった。演出・振付のMIKIKOとPerfumeによる二人三脚のライブ作りのいわば起点となった曲でもある。ソリッドな音とモノクロームのビビッドな映像、そして、ライトセイバーを持ったフォーメーション。Perfumeの原点とも言えるスタイリッシュさに胸が躍る。なるほど。「ネビュラロマンス後篇」と銘打たず、わざわざ「Episode TOKYO DOME」としたのは、物語の完結だけじゃなく、Perfumeのヒストリーも絡めた立体的なエンターテインメントにするためだったのか。

 想定を気持ちよく挫かれて、むしろ観る目は軽やかになった。「再生」が始まる頃には、そうか! ゲームが再生されたのかと、遊び心のあるリベンジにニヤリとしてしまった。「パンパパン、ホー!」で盛り上がる観客に最高の笑顔を向ける3人の姿を観ながら、PerfumeがMIKIKOとともにずっと取り組んできた「ドームを3人だけで魅せる」が完結した、という感慨にも浸った。もちろん映像やライトも素晴らしいのだが、ギミックなしにリアルな3人がそこにいるだけでPerfumeが成立している。それこそが宝石。そもそもドームがこんなにも狭く見えるってどういうこと? とさえ思った。

 どこか重苦しい「Cipher」をイントロダクションにしてモードが切り替わる。「再起動世界」の「意識の再展開 Start again」で、いよいよ『ネビュラロマンス後篇』の世界へ。「キキモ」によってこれまでの経緯も語られ、主題歌「ネビュラロマンス」が始まると、3人はもう完全に物語のヒロインに。映像に現れたレトロな写真のせいだろうか。なぜかせつなくなった。心地よい没入感と夢のような多幸感に心が揺れ始めたようだ。

 ここで3人のMCがはさまれる。「みなさんこんばんは!」と言いながら、「ユカです」、「アヤカです」、「アヤノです」と劇中劇仕様をぶってみせる3人にドッと笑いも湧いた。何よりもまず、「一生Perfumeでいたいという気持ちでコールドスリープ入る」ことについて真摯にそれぞれの思いを語った3人に、会場から本当に割れんばかりの拍手が送られる。フィクションとノンフィクションの狭間を自由に行き来して楽しもうという機運が、一気に会場に広がっていった。

 イントロと共にどよめきが上がったのは「エレクトロ・ワールド」。「ヘイ!ヘイ!」という掛け声の熱がすごい。『ネビュラロマンス』につながる近未来チューンがPerfumeにはいっぱいあるなとあらためて思う。レーザーから粒子が生きているようにあふれ出る景色に見惚れた「ソーラ・ウィンド」、花道を三方に分かれてキックボードを蹴って入れ替わる姿が爽快だった「Virtual Fantasy」と、なんともやわらかな高揚感に包まれ続けた。

 打って変わって演出的にもサウンド的にも攻めのチューンに。「FUSION」はライゾマティクスとのコラボで演出手法をアップデートし続け、世界をざわつかせた代表曲だ。東京ドームの屋根にまで映るバーチャルな影絵は、本当にモンスターのようだった。続いたのは、ここぞというときにだけに登場する「Perfumeの掟」。ふと見ると、「12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25」という大きな数字が現れていた。冒頭でも書いた通り、これは初の東京ドーム「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」のオマージュ。

 ここに至り、アリーナに敷かれた十字の花道もそうだと気づく。あのときは白で今回は黒だが。しかも、ビームライフルで三方の風船を撃ち抜くあ〜ちゃん、10人のかしゆか、自分たちの歩みをポーズでキメるのっちなど、パフォーマンスも2010年の再現。こんなにもあの東京ドームに3人の思いがあったとは! と少し驚いた。

 その「Perfumeの掟」のシーンのなかで、『ネビュラロマンス』の宿敵「カキモト」との激しい戦いもシンボライズされていく。もしかしたら、「カキモト」とは、2010年に東京ドームという夢を実現したからこそ見えた足りないもの、さらなる高みを目指したい、続けたいと思うからこその不安や恐れなど、3人自身が持つ弱さという名の宿敵のことなのかもと思ったりもした。数字を羅列するのは簡単だ。でも、それが途切れていないのは、紛れもなく3人が日々弛まず積み上げてきたから。常人には計り知れないしんどさもあっただろうと、ちょっと胸がキューッとなった。

 だから、大切なものや存在について哲学的とも言える言葉で歌う「Flow」の浮遊感に、そして、白いハンドマイクで歌う「Teenage Dreams」の「帰り道は 心の中にいつもある気がしてるから」という歌詞には、心底ホッとした。「Human Factory」、「Moon」と続く中、「キキモ」のナレーションで、物語のその後の展開も告げられていく。「カキモト」は実は3人の父親で、彼女たちに心当たりのあったパスワードで完全に破壊されたのだが、同時に3人も消失したと。

 「exit」では、そこまでのストーリーが総集編的映像となって現れた。「カキモト」を破壊して消えていく3人の姿も。「キキモ」が、消えた3人について「痕跡を見つけた」と嬉しそうに語るのも印象的だった。映像のラストシーンは、平行宇宙の同じ時空に転生し、ビルの屋上でダンスの練習するあの制服姿の3人だった。

 ここから「ARE YOU READY TO DANCE?」の文字で「PERFUME Z0/Z5 Reeeeemix」と名付けられたメドレーに。光の粒が転生した3人を象徴しているかのよう。『ネビュラロマンス』のユカ、アヤカ、アヤノは、あの物語のあと、平行宇宙のこの地球に降り立ったというわけか! 「ポリリズム」から始まるそこからの流れは、もうみんな大好きシリーズ。「edge」の「say yeah!」はドームが破けるかと思うほどのボリュームだったし、「『P.T.A.』のコーナー」の「かぼちゃ」、「ススキ」、「栗拾い」は、キタキターの涙モノの可笑しさ。メドレー最後の「MY COLOR」は、ワールド・ツアーで世界中の人々と繋がってきた曲。煌々と照らされた観客とPerfumeが、「手のひら」で体温を分かち合う光景は本当に素敵だった。

 最後に3人は、感謝と寂しさとがないまぜになったそれぞれの思いの丈をMCで語った。「初めてのドームで後悔してばかりだった私に、大丈夫だよと言ってあげたい」と、かしゆかは力強く。のっちは思いだけが先走る自分の不器用さを、「うちでシャワーを浴びながらだと言葉が出てくるのに、今はこれが精一杯です」と、まんまの素直さで吐露。「コールドスリープ」を応援の気持ちで受け止めてくれた人々に感謝し、また夢だった東京ドームへの長きにわたる思いを述べたあ〜ちゃんは、「仲がいいけん、楽しいけん、ずっとやってきた」と言ったあと、「大好きだよ」とのっちとかしゆかと手のハートを合わせた。

 「それでは、Perfumeでした。ありがとうございました」と3人が去ると、ライブで稀にしか聞けない「願い」がかかった。あちこちで悲鳴のような声が上がり、4万5千人がPerfumeの歴史を振り返る映像を見上げた。それぞれが自分の歴史とも付き合わせて思いを巡らせる、とても静かで温かな、でも、ちょっとせつない時間だった。その静けさの中で、レポートの冒頭の「巡ループ」のシーンへとつながる。

 10代で巡り会ったあ〜ちゃん、かしゆか、のっち。人生というタイムラインの中で、3人はMIKIKO、中田ヤスタカとも巡り会い、Perfumeを愛するチームとファンと共にPerfumeを育んできた。結成25年、メンバーチェンジもなければ、一度も休んだことがない。そんな女性グループは、後にも先にもPerfumeだけだろう。これからは「3人」ではなく、一人ひとりの人生の冒険に向かう。それをみんなが願ってる。それもまた稀有なこと。

 Perfumeが育ててきた一瞬一瞬の愛おしい過去が巡り巡って今となり、今が過去となる頃また巡り巡って未来を育くんでいく。それぞれの場所で、一人ひとりが自分の足取りで歩いてさえいれば、大切なものは必ず巡りきて、永遠にループし続けてくれる。だから大丈夫。そんな願いが込められている気がした「巡ループ」。これからも3人は、これまで通り、いつだってありのままで輝いていくことだろう。


文: 藤井美保
Photo: 上山陽介(Yosuke Kamiyama)


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Photo: 木下マリ(Mari Kinoshita)

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Photo: 森好弘(Yoshihiro Mori)

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Photo: 上山陽介(Yosuke Kamiyama)

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Photo: 上山陽介(Yosuke Kamiyama)

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Photo: 上山陽介(Yosuke Kamiyama)

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Photo: 上山陽介(Yosuke Kamiyama)

Perfume ZO/Z5 Anniversary "ネビュラロマンス" Episode TOKYO DOME
[セットリスト]
・GAME
・再生
・Cipher
・再起動世界
----前編のあらすじ----
・ネビュラロマンス
─── MC ───
・エレクトロ・ワールド
----近未来三部作 mix----
・ソーラ・ウィンド
・Virtual Fantasy
----パラレルワールド----
・FUSION
----ロボットアーミー----
・Perfume の掟 2025
・Flow
・Teenage Dreams
・Human Factory – 電造人間 -
----パスワード----
・Moon
・exit
・Perfume ZO/Z5 Reeeeemix
ポリリズム
Butterfly
edge
チョコレイト・ディスコ
「P.T.A.」のコーナー
NIGHT FLIGHT
MY COLOR
─── MC ───
----振り返り映像----
・巡ループ
・GISHIKI
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